蒼い空の下で愛を誓う〜飛行機を降りたパイロットはただ君を好きなだけの男〜

日常

今日も空を見上げると飛行機がどんどんと飛び立っていくのが見えた。

ここ東京国際空港は世界中でも有数の過密空港。1機出発するのに必要な時間はおおよそ90秒。そのため2.3分間隔で飛び立っていく忙しい空港だ。
もちろんその間に着陸する飛行機もあり、常に空港は賑わいを見せている。

カウンター業務についている私は今日も空をゆっくり見上げる暇もなく、次々と訪れるお客様への対応に追われていた。

「福岡行き59便へご搭乗の花田さまいらっしゃいませんでしょうか」

まもなく出発予定のお客様がチェックインを済ませているのにカウンターに来られていない。出発まであと10分、こうなると私たちは空港内を駆け回り始める。トイレやショップ、待合の椅子と見て回る。時折間違えて違うゲートにいることもあるため大きな声を上げながら探し回る。

「見つかったわ」

同僚からそんな言葉が聞こえホッとしたのも束の間。トイレの前で泣いている男の子を見つけた。周りには保護者らしき人の姿は見えない。

「こんにちは。どうしたのかな?」

近づいてみると2.3歳くらいに見える。泣きじゃくり私の顔を見るとまた一段と泣き声が大きくなった。

「ママかパパがいないのかな?」

膝をついて視線を合わせると小さく頷いてくれた。

「そっか。じゃ、お姉ちゃんが一緒に探してあげるね! ぼく、お名前は言える?」

「れお」

「れおくん? かっこいい名前だね」

そう言うとまた小さく頷いてくれる。

「よし、じゃ探してみようか。ママかパパの名前はわかるかな?」

「まま」

そうだよね。ママはママだよね。名前は言えないか……。この年齢でママの名前を言える子の方が少ない。私は手を繋ぐとまた声を張り上げた。

「れおくんのママいませんかー??」

近くを見回しながら声を張り上げた。けれどこちらに近寄ってくる姿は見当たらない。
どうしよう、と思っているとれおくんがぎゅっと手を握りしめてきた。心細いのだろう。私も握り返すと笑顔で、すぐに見つかるからねと声をかけた。彼の手を引き、声を張り上げながらショップの近くを歩いていると赤ちゃんを抱いたお母さんが駆け寄ってきた。

「すみません!」

「まま……」

れおくんは繋いだ手をぱっと離しママに向かって駆け出した。

「すみません、この子のオムツ交換してる間にいなくなってしまって。主人が見てくれてるものだと思っていたのですが」

「いえ、会えてよかったです。またね、れおくん」

声をかけるとママの服を握りしめたまま、ばいばいと恥ずかしそうにしている姿を見て可愛いなと思いながら手を振り持ち場へ戻った。
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