続お菓子の国の王子様〜結婚に向けて〜       花村三姉妹  美愛と雅の物語
1:もっと近づく2人

結婚の挨拶 西園寺家

婚約指輪を受け取った翌週の土曜日、ついに西園寺家に結婚の挨拶に伺うことになった。




美愛《みあ》は母親の久美子と姉たちから、服装などのアドバイスを受ける。洋服は圭衣が用意してくれるとのことだ。久美子からは、挨拶の仕方や立ち振る舞い、言葉遣いについて何度も注意を受ける。そして、手土産については雅と相談するように言われた。


「雅さん、実家の皆さんが好きなものはありますか?」

「うちの皆も食べることが好きだからね。あっ、以前俺が食べたドイツのパイのようなやつ? あの話をしたら、食べてみたいと言っていたな。」

「で、でも初めてのご挨拶で手作りって......」


非常識な娘と思われたり、結婚に反対されるのではないかと渋る美愛。


「もしかして心配? 大丈夫だと思うけど、ちょっと待ってね」


雅はケータイで電話をかける。


「もしもし、母さん? うん、俺だよ。今週末そっち行くときの手土産は何がいい? じいちゃんたちと母さんたちはリクエストがあるかな? ............えっ、やっぱりそう思ったんだ。でも、彼女が、失礼にならないかと心配してくれて。............うん、分かったよ。じゃあ、土曜日ね。」


電話を終え、心配そうな顔をしている美愛に微笑む雅。


「大変でなければ、ぜひ美愛ちゃんのドイツのパイを食べたいんだけど、いいかな?」

「へ? 本当に? 私は大丈夫だけど。金曜日に生地を用意しておけば、土曜日の朝にリンゴを切って生地を伸ばして焼くだけだから。あ、あのね、伝統的なものにはレーズンが入るけれど、うちは父さまが苦手だから胡桃にしているの。どっちがいいかな?」

「そうだったの? 俺は美愛ちゃんが作った胡桃入りのが好きだよ。いつも通り、ヴィッテルスバッハ家の味にしよう?」
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