続お菓子の国の王子様〜結婚に向けて〜       花村三姉妹  美愛と雅の物語
3:ますます近づく2人

美愛サイド

温泉旅行からマンションに戻り、雅さんは書斎で仕事をし、私は洗濯をしながらロボット君に床掃除をしてもらっている。


マンションに着いた時、夕飯後に話があると言われたんだけど、以前にも同じようなことを言われたことを思い出す。


あの時は確か佐藤麻さんが社内メールで私を誹謗中傷した件だったよね?
今回は何なんだろう?


いつもの癖で、すぐにネガティブに考えてしまう。




初恋の雅さんと両思いになり、婚約したけれど、どこか自分に自信が持てない。彼は慶智の王子たちの1人で、常に女性たちから注目を浴びている。対して、私は何の取り柄もない地味な子。そんなことを考えながら、お風呂掃除を終え、お惣菜で夕飯をいただいた。




ソファーに移り、雅さんが話し始める。


「明日の朝、会社のみんなに俺たちのことを発表しようと思う。ちょうどカフェBon Bonやネット販売についても伝える予定だから。いいかな?」


私は戸惑いすぐにオーケーを出せなかった。


雅さんは社内でも大和副社長と共に人気があり、ファンクラブがあると聞いたことがある。


いずれ一般に公表されることはわかっているが、私の覚悟が足りないのかな?また佐藤麻茉さんの時のように、誰かに責められるのが怖い。


左手でチャームのネックレスに触れようとしたが、つけていないことに気づいてハッとした。


そうだ、婚約指輪を受け取った日に2人で話し合って決めたんだ。これからは雅さんをもっと頼るって。


うつむいたまま何も言えずにいる私の手を取り、彼の膝に座るように誘導される。


「何が不安なの? 俺に話してみて。」


雅さんはいつも私を焦らせることなく待ってくれる。


この時、なぜか非常識いよりの言葉が蘇ってきた。


『西蓮寺家の嫁としてやっていけないわよ』

『この子は本当に西園寺家に相応しいの?』


この『西蓮寺家』を『雅さん』に置き換えると、今の私が考えていることになる。


『雅さんの嫁としてやっていけないわよ』

『この子は本当に雅さんに相応しいの?』

 
非常識いよりは、こうなることを分かっていたのだろうか?
あれほど啖呵を切ったのに、自分が情けない。
何か言わなければ、これ以上待たせちゃダメだよね?
どうしよう……


焦って頭の中がパニックになっている私を、いつものように優しく抱きしめてくれた。
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