続お菓子の国の王子様〜結婚に向けて〜 花村三姉妹 美愛と雅の物語

雅サイド

2月14日、夜が明ける前に美愛ちゃんを起こさぬようベッドから出て、ジョギングの準備をしマンションを後にした。


ついにこの日がやってきた。長年の夢であったカフェが、特別な日である今日、オープンする。


今日はバレンタインデーでもあり、俺にとって1番大切で最愛の人、美愛ちゃんの誕生日でもある。


不思議だな、あの日約束したことを、彼女の誕生日にオープンできるなんて。




30分ほどのジョギングを終えて帰宅した。


静かに寝室のドアを開け、着替えを手に取る。美愛ちゃんはまだぐっすりと寝ており、浴室へ向かいシャワーで汗を流す。


スーツに着替え、キッチンテーブルに薄紫色のバラ23本を束ねたブーケとカードを添える。


美愛ちゃんの実家の庭には、圭衣ちゃん、葉子ちゃん、そして美愛ちゃんのバラがそれぞれ植えられており、彼女のバラは『My Little Angel』という名前。ジョセフさんが子供たちが誕生した年に、おじいさんの庭に植えさせてもらったとか。
もちろん、奥さんの久美子さんには、結婚した年に赤いバラを植えたらしい。


さすが愛妻家で、娘たちを溺愛しているだけのことはある。
彼女の実家に伺った際、ジョセフさんに教えてもらった。


美愛ちゃんを驚かせたくて、その薄紫色のバラを特注し、昨日、マンションのコンシェルジュに預け、ジョギングの後に受け取った。


カフェに行く前に、もう一度寝室を覗いてみる。


よかった、まだ寝ているみたいだ。
昨日は手加減したつもりだったが、彼女が疲れ果てるまでまた抱きつぶしてしまった。


彼女の誕生日の日くらい、好きなことをしてほしい。
それに、花村美愛としての最後の誕生日だから。
来年からは西園寺美愛として、ずっと一緒にお祝いしようね。


寝ている彼女を起こさないように、そっとキスをした。　絹のように滑らかな彼女の髪に触れる。


「お誕生日おめでとう、俺のお姫様」


小声で囁きながら、部屋を後にした。