姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
運命の分かれ道
三月二十日、大学の卒業式の日。
叶奈は母の若い頃の着物と袴で出席した。古典柄が逆にモダンな感じがして叶奈は気に入っていた。
友人たちからも似合っていると言われたし、肩までのボブヘアの叶奈が着るとレトロな雰囲気になる。
厳かな式が終わってからは、写真を撮ったり後輩から花束を受け取ったりと学生最後のイベントを楽しんだ。
涙する友人もいる中で、翌日には譲と海へドライブする約束がある叶奈は自然に笑顔になってしまう。
「おめでとう、叶奈」
いつもはカジュアルな服装の麻子も、今日ばかりは上品なグレーのスーツ姿だ。
苦労して育てた娘の晴れ姿を見ようと、大学まで来てくれていた。
「ありがとう、お母さん」
ふたりが並ぶと、若々しい麻子とはまるで姉妹のようだ。
「ランチにでも行く? カフェでお茶する?」
そう言いながら、式のあいだ電源を切っていたからと、麻子がスマートフォンをバッグから取り出した。
「あら、着信があったみたい」
叶奈もスマートフォンを見たら、祖父から【すぐ帰ってきてくれ】というメッセージが届いていた。
「どうしたのかな」
「とにかく急ぎましょう」
祖母の具合でも急に悪くなったのかと、麻子と叶奈は不安になってくる。
ふたりは急いでタクシーを呼び止めて、帰路を急いだ。