姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
正直な気持ち
叶奈はあの日から後悔ばかりしている。
まさか譲と恭介が同じ高校の同級生だったなんて。
「初めまして」
驚きのあまり、勝手に口から言葉が飛び出してしまった。
譲から離れても罪悪感で胸が苦しかった。『体調が悪いので』と恭介に断って、すぐにパーティー会場から離れた。
叶奈は逃げることしかできなかった。
申し訳なさと、すべて打ち明けてしまいたいジレンマ。
そっけない態度に気分を害して、恭介からお見合いを断ってくれないだろうかと願ってしまう。
あれこれ考えていると、奈緒のマンションに戻ってからも落ち着かなかった。
翌日になって、恭介が琴子から携帯番号を聞いたと言ってわざわざ連絡してきた。
『体調はいかがですか?』
『元気になったら会いましょう。また連絡します』
あれで終わるかと思っていたが、どうやら恭介には松尾家との縁談を断る気はなさそうだ。
もしかしたら彼も「幼なじみとの約束だから」と言い聞かされて育ったのではないだろうか。
だから相手が奈緒だろうと叶奈だろうと、どちらでももいいのかもしれない。
このままでは、ずるずると泥沼にはまっていきそうで恐ろしい。
松尾家から逃げ出せなくなる、最悪の未来も現実味を帯びてくる。
(でも、播磨屋に援助してくれているし)
ひとりでマンションにいたら、悪い方へばかり考えが偏っていく。
これ以上落ち込みたくなくて、叶奈は出かけることにした。