パーフェクト・フィグ
#7."心配なんだ"




麻酔科医が小児心臓外科医を抱えていたことは、
当然病院中のスクープと化していた。

生憎、雅俊もすみれも気にするタチではなかったが、
思わぬところからの突っ込みには、
さすがの雅俊も頭を抱えた。

それは…


『聞いたよ~まっさん!
 女の子お持ち帰りしたんだってぇ~?』


アメリカからの一本の電話だった。


「…」


雅俊は黙って電話を切った。

だが、数秒後再びかかってきた電話に出ると、
聞きなれたうるさい声が、
ギャンギャンとなにやら騒いでいた。


『ちょっと⁉
 急に切るのは失礼なんじゃないの?』

「朝っぱらから電話しておいて
 どの口が言うんだ」

『いいじゃん!
 まっさん、おじいさん並みの早起きでしょ?』


向こうは恐らく日が沈んだばかりだろう。

あいつのことだ。
後ろから聞こえる騒音から、
どこぞのクラブにいることは
想像に容易い。

かつての同期の鬱陶しい目覚ましコールに、
雅俊は大きなため息をついた。


「で、何の用だ、牧」

『あ、ちょっと待ってね、移動する』

「おい…」


額の血管が浮き出る、浮き出る。

再び電話を切って布団に入ろうかと考えたが、
色々あってアメリカへ発った旧友が
元気そうなことには、内心安心していた。


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