パーフェクト・フィグ
#10."ずっと、君が欲しかったんだ"





『あれ、誰?』

『あぁ。藤原先生です。
 カッコよくて、仕事もできて、
 いい先生なんですけど、
 来月からアメリカ行っちゃうんですよ』

『へぇ…』


2年前。
東都南大学病院の見学に来たその日。

手術室師長のオリエンテーションを受けながら、
すみれは各手術室の様子を見て回っていた。

最後に中2階から、1番でやっている
生後半年のバンディング手術を見ていると、
一人の医者が目についた。

緑色のスクラブを着て、患児の頭側から
術野を覗いて見ている、背の高い男。

その医師の、血ガスを採るタイミング、
ACTを測るタイミング、
プロタミンを準備するタイミング…。

先を見越しつつも、
執刀医が求める絶妙なタイミングで、
患者管理が為されているのが、
ここから見ていてもよくわかる。

術野から目を反らすことなく、
手術の進行具合を把握している。

そんな麻酔科医は、大阪にも少なかった気がする。


あの医者、欲しいな…



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