パーフェクト・フィグ
#4."君も同じか"
すみれが何度目かの、
正確には日付が変わってからは初めての
ハートセンターに入ると、
夜勤の看護師が駆け寄ってきた。
「心美ちゃん、
20分前ぐらいからチアノーゼ出始めて、
反応も悪くて…」
若い看護師の名札を見ると、
名前の横には若葉マーク。
すみれは深追いせずに
そばにいた若手に確認した。
「オペ室に連絡は?」
「済んでます。麻酔科にも。
梶木先生も来てくれて、
今ご両親にICしてます」
IC、すなわちインフォームドコンセントは、
言わば手術の説明と同意を得ることだ。
患者が子どもで、意思確認ができない場合は
その親が代理人として同意書にサインをする。
すみれは頷いてベッドのロックを外した。
「先に上がる。
オペ室に今から行くって連絡して」
「はい!」
すみれは全身が青白くなった
まだ1歳半の乳児を見て、
「大丈夫」
と小さく、だがはっきりと呟いた。