『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

29 お騒ぎに巻き込まれましたわ!

「ぎゃっ!」

 何者かが勢いよくキャロラインにぶつかった。

 彼女はバランスを崩してつんのめる。すかさず護衛がキャッチして、別の護衛が犯人を捕まえた。

「いてててっ!」

 それは双子たちより5歳くらい年上の男の子だった。
 その身なりはボロボロで、スラム街の住人のように見える。

「放せっ!」

 彼は護衛の腕の中でもがくが、鍛えられた公爵家の護衛騎士はびくともしなかった。

「何をしようとしていた?」

「この姉ちゃんがお貴族様で金をたんまり持ってるって聞いて……」

 キャロラインと護衛は顔を見合わせる。今日は完全なお忍びで、目立たないように動いていたのに、どこから情報が漏れたのだろうか。

「それで、わたくしからお金を盗もうとしたのですね?」

「……」

 少年は罰の悪そうな顔をして、そっぽを向いた。よく見るとガリガリに痩せていて、彼の生活の苦しさが垣間見れた。

(可哀想に……。生まれが違うだけで、こんなにも……)

 キャロラインはきゅっと唇を噛む。
 自分は屋敷のこと――身の回りの狭いことばかりで、この世界のことまで考えていなかった。
 毎日遊んでばかりで、ノブレス・オブリージュの貴族として何をしていたのだろうか。
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