『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

30 お子たちがいなくなりましたわ! ※子供が暴力を受ける描写があります

「ロレッタ……? レックス……?」

 キャロラインの弱々しい声が子供たちを呼ぶ。
 でも、返事はなくて。

「どこ……」

 それに二人の姿も見当たらなくて……。

 ふと気付くと、目の前にはロレッタの帽子が落ちている。

「ロレッタ! レックス!」

 継母の非痛な叫び声が、乾いた王都の大通りに鳴り響く。







「んん……」

「ここは……?」

 双子が目覚めると、目の前は見知らぬ風景が広がっていた。
 がらんとした物置みたいな狭い部屋。湿気が多くて埃っぽくて、壊れた椅子や古めかしい時計などが乱雑に置かれている。

「おねえさま、ここ、どこ……?」

「あたしに、きかれたって、しらないわよ」

「おかあさまは……?」

「しらない! あんたのせいですからね! はやく、かえるわよ」

「どうやって?」

「……」

 ロレッタは黙り込む。ここがどこなのか、今がどういう状況なのか、皆目見当がつかなかった。
 おぼろげな記憶を辿(たど)って、分かっているのは自分たちは何者かによって連れ去られたということだ。

「気付いたようだね」

「!」

 にわかに入口から女の声が聞こえた。
 二人は弾かれるように顔を上げる。それは聞き慣れた声だったのだ。
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