『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!
33 家族愛は不滅ですわ!
ハーバート家の中庭は、わいわいと活気立っていた。
今日は晴天。一家の主であるハロルドの誕生日だ。
キャロラインとロレッタとレックスは、朝から大忙し。早起きをして、誕生日会の準備に頑張っていたのだ。
中庭のテーブルの中央には、大きなチョコレートケーキ。
他にも、お菓子やサンドイッチ、サラダやフライドチキンなど数々の美味しそうな料理が所狭しと並べられてある。
3人の手作りの誕生日ケーキにロウソクを立てて、キャロラインが音頭を取った。
「いきますわよぉ〜! せ〜〜〜のっ!」
「「おとうさま、おたんじょうび、おめでとうございます!」」
「旦那様、おめでとうございますわぁっ!」
ハロルドは大きく息を吐いて、一発でロウソクの炎を消した。
レックスも消したかったらしく、「あぁっ!」と嘆きの声を上げる。見かねたタッくんがそっと小さな炎を吐いて一本だけ火を点けて、彼はふぅふぅと一生懸命に息を吐いた。
「ありがとう。すごく嬉しいよ」
実際にハロルドは飛び上がりそうなほどに感激していた。妻と子供が一緒になって、自分の誕生日を祝ってくれたとこは初めてだったのだ。
「こうやって無事に誕生会を開催できて本当に良かったですわねぇ〜」
「そうだな」
「あのときの、おかあさま、すっごく、かっこよかった!」
「あたしも、おかあさまの、ゆうかんなすがたに、かんげきしたわ」
「ありがとうですわぁ〜。旦那様が助けに来てくれた時もかっこよかったですわぁ〜」
「っ……!」
ハロルドの顔が赤くなる。妻からこう手放しで褒められると、ちょっと恥ずかしい。
「そ、そうか……」
彼はロボットダンスをするかのように、ぎくしゃくと顔を動かしながら、
「わ、私は……キャロラインの『エーティーエム』だからな! 当然だ!」
照れくさそうに言った。
「え…………?」
沈黙が落ちる。硬直するキャロライン。たちまち、顔を青くさせた。
(ま、まさか……)
あの時の軽口を覚えていたのだろうか。
ハロルドは妻が照れているのかと思って、今度はしっかりと目を見て言う。
「ほら、以前、君が言っていただろう? 家族のために頑張る夫のことをそう呼ぶのだと」
「あ、あぁ〜〜……。そうでしたっけ……」
キャロラインは曖昧に返事をする。冷や汗が一気に噴き出した。
不味い。このままでは、なんだか非常にヤバいことになる予感がする。
「私は決めたのだ。家族のために、お前たちのエーティーエムになると」
「そ、そうですか……」
真剣な表情の夫を前にして、もう何と答えればいいのか分からなかった。
「ぼくも、おかあさまの、えーてぃーえむに、なる!」
「あたしだって、えーてぃーえむに、なってあげてもいいんだからね?」
父の真似をして、今度は双子がATM宣言をした。
動揺で震えるキャロライン。今さら何と弁解すれば良いのか皆目見当がつかなかった。
(あちゃーですわ……。やっちまいましたわ……)
どんよりと肩を落としているキャロラインとは対照的に、父子は「頑張ってエーティーエムになるぞー!」と拳を突き上げて誓い合っている。
そんなキャロラインだけ気まずい雰囲気で、誕生日会は幕を開けたのだった。
今日は晴天。一家の主であるハロルドの誕生日だ。
キャロラインとロレッタとレックスは、朝から大忙し。早起きをして、誕生日会の準備に頑張っていたのだ。
中庭のテーブルの中央には、大きなチョコレートケーキ。
他にも、お菓子やサンドイッチ、サラダやフライドチキンなど数々の美味しそうな料理が所狭しと並べられてある。
3人の手作りの誕生日ケーキにロウソクを立てて、キャロラインが音頭を取った。
「いきますわよぉ〜! せ〜〜〜のっ!」
「「おとうさま、おたんじょうび、おめでとうございます!」」
「旦那様、おめでとうございますわぁっ!」
ハロルドは大きく息を吐いて、一発でロウソクの炎を消した。
レックスも消したかったらしく、「あぁっ!」と嘆きの声を上げる。見かねたタッくんがそっと小さな炎を吐いて一本だけ火を点けて、彼はふぅふぅと一生懸命に息を吐いた。
「ありがとう。すごく嬉しいよ」
実際にハロルドは飛び上がりそうなほどに感激していた。妻と子供が一緒になって、自分の誕生日を祝ってくれたとこは初めてだったのだ。
「こうやって無事に誕生会を開催できて本当に良かったですわねぇ〜」
「そうだな」
「あのときの、おかあさま、すっごく、かっこよかった!」
「あたしも、おかあさまの、ゆうかんなすがたに、かんげきしたわ」
「ありがとうですわぁ〜。旦那様が助けに来てくれた時もかっこよかったですわぁ〜」
「っ……!」
ハロルドの顔が赤くなる。妻からこう手放しで褒められると、ちょっと恥ずかしい。
「そ、そうか……」
彼はロボットダンスをするかのように、ぎくしゃくと顔を動かしながら、
「わ、私は……キャロラインの『エーティーエム』だからな! 当然だ!」
照れくさそうに言った。
「え…………?」
沈黙が落ちる。硬直するキャロライン。たちまち、顔を青くさせた。
(ま、まさか……)
あの時の軽口を覚えていたのだろうか。
ハロルドは妻が照れているのかと思って、今度はしっかりと目を見て言う。
「ほら、以前、君が言っていただろう? 家族のために頑張る夫のことをそう呼ぶのだと」
「あ、あぁ〜〜……。そうでしたっけ……」
キャロラインは曖昧に返事をする。冷や汗が一気に噴き出した。
不味い。このままでは、なんだか非常にヤバいことになる予感がする。
「私は決めたのだ。家族のために、お前たちのエーティーエムになると」
「そ、そうですか……」
真剣な表情の夫を前にして、もう何と答えればいいのか分からなかった。
「ぼくも、おかあさまの、えーてぃーえむに、なる!」
「あたしだって、えーてぃーえむに、なってあげてもいいんだからね?」
父の真似をして、今度は双子がATM宣言をした。
動揺で震えるキャロライン。今さら何と弁解すれば良いのか皆目見当がつかなかった。
(あちゃーですわ……。やっちまいましたわ……)
どんよりと肩を落としているキャロラインとは対照的に、父子は「頑張ってエーティーエムになるぞー!」と拳を突き上げて誓い合っている。
そんなキャロラインだけ気まずい雰囲気で、誕生日会は幕を開けたのだった。