『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

7 おバトル勃発ですわ!

「キャロラインが子供たちの服を?」

「はい、旦那様」執事長はニコニコと微笑む。「お坊ちゃまとお嬢様のあのような嬉しそうな顔を、久し振りに拝見しました」

「たかが服でか?」

「えぇ。新しい母君からのプレゼントが、よっぽど嬉しかったのでしょう」

「ふぬ……」

 ハロルドはしばし考え込む。たとえ茶会用の特別な服だとしても今の予算で十分買えるわけだし、そんなに喜ぶことだろうか。

「正直、初対面の際は心配しましたが、奥様は母としての務めも立派に果たされているようですね」

「っ……!」

 ハロルドはにわかに幼い頃を思い出した。
 たしかに母親からの贈り物というものは、子供にとって特別なものだ。自分もクマのぬいぐるみを、ずっと大切に持っていたっけ。

「ということは……。あの子たちにとって、キャロラインは母として認められたということか」

「はい。今日も仲良く勉学に励んでおりました」

「そうか」

 今度こそ上手くいくといいが……と、彼は思わず願っていた。

 最初の妻以外は、国王から押し付けられた政治的取引だった。しかし、どの妻も子供たちと反りが合わずに、挙げ句問題ばかり起こし去って行った。

 キャロラインはこれまでで一番の厄介な令嬢だと思っていたが、想定外に一番順応しているらしい。
 本人も政治的な婚姻だと割り切っているし、パートナーとしてやりやすいかもしれない。

 ……かなり、面倒くさい性格をしているが。

「それで……。旦那様にご相談がございまして……」

 執事長の緊張した声音に、ハロルドは弾かれたように意識を戻した。

「なんだ? やはり、キャロラインが問題を起こしているのか?」

「いえ、奥様は何も。ですが、奥様から調査依頼をされた件で、一点気になることが……」

 執事長は帳簿を開いて、主人に説明を始める。話が進むにつれて、ハロルドの眼光が鋭くなった。


< 24 / 132 >

この作品をシェア

pagetop