『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

15 初めて対話した夜ですわ…!

「旦那様、ここにいましたの。夜風は身体に毒ですわよ」

 ハロルドはおもむろに振り返る。逆光でよく見えなかったが、彼の瞳は揺れているように見えた。
 キャロラインはゆっくりと彼のもとまで進んで、大人1人分くらいの間をあけて並んで立った。

「……子供たちは?」と、ハロルドは沈んだ声で訊く。

「もう、寝ましたわよ。疲れていたようで、ぐっすり」

「そうか……」

 ロレッタとレックスには、乳母と一部の使用人が屋敷から去ったことを伝えた。

 はじめは二人とも混乱してわんわんと泣いてしまった。だがハロルドが根気よく話したところ、ひとまずは納得したようだった。

 それでも、二人にとって今回の件はトラウマになっているかもしれない。
 特に、ロレッタだ。彼女はバーバラのことを盲信していたようなところがあったので、ショックはレックス以上のようだった。

 これから時間をかけてケアをしなければいけないと、キャロラインは固く胸に誓った。

「……」

「……」

 しばらく沈黙が続いた。夜風で葉がざわめく音だけが聞こえている。
 二人ともまっすぐに景色だけを見つめていたが、隣にいる配偶者の気配をずっと意識していた。

 少しして、

「申し訳ございませんでした!」
「すまなかった!」

 キャロラインとハロルドは、同時に向き合って頭を下げた。
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