『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

24 お夜会へ行きますわ!④

 王宮のバルコニーは静かだった。
 時おり窓から漏れてくる音楽も、どこが別の世界みたいだ。
 身体を抜ける夜風が冷たくて、キャロラインの火照った皮膚もみるみる冷えていく。

(旦那様は……全てをご存知でしたのね……)

 さっきの王太子との会話が、嫌でも頭の中に浮かんでくる。
 ハロルドは過去のピーチ男爵令嬢とのトラブルについて言及していた。
 きっと、自分が令嬢時代にしでかしたことも知っているのだろう。

(わたくしは子供たちに偉そうに教育しているくせに……。本当は……自分自身が一番駄目な人間でしたわ……)

 心がどんどん沈んでいく。今日でハーバート公爵夫人という役目は、お役御免になるに違いない。
 それは自分の悪行からして仕方のないことだが……、

(レックス、ロレッタ、屋敷の皆様……旦那様…………)

 家族とお別れをするのはあまりに早すぎて、心残りしかなかった。
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