『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

25 お夜会へ行きますわ!⑤

 キャロラインがぎゃんぎゃん泣いたあと、ハーバート夫妻は休憩室で身なりを整え直した。

 公爵家の従者たちに抜かりはない。どんな緊急事態にも対応できるように、常に控室でスタンバイをしているのだ。
 といっても、常に完璧な公爵には必要のない準備なのだが……今夜は違った。

「……!」

 従者たちは絶句する。ハーバート夫妻はどんよりと気まずそうにしていた。

 キャロラインの体液でぐちょぐちょのハロルド。彼女も涙で化粧が剥がれ落ちて、なんか……胸元あたりもぐちゃぐちゃしていた。

「済まないな。これからキャロラインとダンスを踊りたいのだが……」

「ごめんなさいですわ……」

 数拍の沈黙のあと、プロフェッショナルたちは動いた。

「問題ございません。すぐに新しい衣装をご用意いたしましょう」

「奥様はこちらへ。まずはお化粧のお直しから始めましょう」

 彼らはスピーティーに、()つ丁寧に仕上げていく。二人はこの大修羅場の中で、借りてきた猫みたいに身を任せていた。

 そして二十分後、

「うわぁ〜! 素敵ですわぁっ!」

「ありがとう。さすがだ」

 二人は衣装を一新。髪やメイクも整えて、王宮のパーティーに参加するに相応しい格好に戻った。

 入場時は白と基調にハロルドのアイスブルーの瞳に合わせた服装だったが、今回は黒を基調にキャロラインの金色の瞳に合わせた格好だ。
 ガラリとイメージチェンジした姿は、格調高くも夜会の華々しさにマッチした美しさだった。

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