『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

26 タッくん、危機一髪ですわ!①

 王宮に伝説のドラゴンが出現したという噂は、瞬く間に広がった。
 貴族たちはもちろん、平民も大騒ぎで、王都中がドラゴンの話題で持ち切りだった。

 伝説では、ドラゴンは火、水、土、風、光、闇、時――それぞれの属性を持つ各個体があり、この世界の創造者であると言われている。

 彼らは基本的には人間の前に姿を現すことはないが、数百年あるいは数千年に一度、突如顕現(けんげん)して、選ばれた人間と契約を結ぶ。

 その瞬間から契約者は特別な力を宿し、世界の破滅から人々を救うだろう。
 ……そんな神話だった。


 国王はすぐにドラゴン捕獲命令を出した。
 ここで自ら……または息子(スティーヴン)がドラゴンと契約すれば、王家の権威はこの先ずっと安泰。継承に関するゴタゴタも解決へと進むだろう。

 他国が情報を得て動き出す前に、なんとしでもグローヴァー王国がドラゴンを独占するのだ。
 契約者となると、指一つで国土を焼き尽くせる能力を得るらしい。この力があれば、他国も簡単に支配できる。

 ドラゴン捕獲作戦は、軍の総司令であるハロルドに勅命された。
 彼の任務は、伝説のドラゴンを生きたまま国王のもとへ連れて来ることだった。


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