ハイスペ上司の好きなひと
新人


そうしているうちに日は流れ、以前に話のあった今年度の新入社員の教育がいよいよ始まった。

紫の元についたのは1人、可愛らしい顔立ちの七瀬という女だった。

ただこの七瀬という女は非常に厄介な性格をしていた。


「古賀さーん、ここの入力がまたおかしくなっちゃいましたぁ」
「七瀬さん…また?」


支給されたノートパソコン片手にうるうると瞳を潤ませ寄ってこられ、紫は何度目だと喉元まで出かかった言葉を飲み込む。


「また数式弄ったんでしょ?勝手に変えられると困るから原本は使わないでって何度も話したよね?」
「ええ〜そうでした?ごめんなさぁい」


厄介だと言うのにはきちんと理由があり、彼女は自分の容姿の使い方をよく分かっている。

新入社員の中で頭ひとつ飛び抜けて可愛いと称されるだけあって、メイクも服装も女子力をコンプリートしたかのように完璧で、表情ひとつで男性陣を陥落してしまう。

だからこちらが何かキツい物言いをすれば自然と責められるのはこちら側になってしまう構図が出来上がる。

自分のように冴えない女ならば尚更、可愛い後輩に嫉妬をするなという雰囲気をひしひしと感じる。

だから何度も同じ事を聞かれその度に注意をしても一向に反省をしない彼女に対して厳しい言葉の一つでもかけてやりたいが、紫自身もそれほどこの会社での経験値も信頼も出来上がっていないのでそれが出来ないでいた。



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