不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした
第4章 いつまでも、みんな一緒に
36.とってもにぎやかな、大切な日々
そうして、ようやくもとの平和な暮らしが戻ってきた。
ヴィンセント様と一緒に日々の執務をこなしたり、夫婦水入らずで料理や裁縫をしたり。裏の森や中庭で、幻獣のみんなとお喋りをしたり。
けれどそんな幸せな暮らしは、またちょっぴり形を変えていた。
「ヴィンセント様、あの、この子があなたに会いたいって……」
「奇遇だな。ちょうど俺のところにも、来客があった」
ヴィンセント様の部屋に駆け込むと、彼の肩に美しい鳥が止まっていた。鳩くらいの大きさのその鳥は、七色に輝くとても美しい羽をしていた。
『貴方が彼の奥さん? 僕はこれから、ここで暮らすことにしたから』
七色の鳥が、どことなくつっけんどんな少年の声で喋る。
「……また、幻獣が増えたんですか」
「そういう君こそ、その手の中にいるのは……」
「はい、幻獣です。この子も移住希望です」
わたしの手の上では、片手に収まってしまうくらいに小さな金色のウサギがくつろいでいた。とても高い声で、可愛らしくあいさつしてくる。
『よろしくねー』
最近、この屋敷を次々と幻獣が訪ねてくるようになったのだ。どうも、前に南の戦場でフラッフィーズが大暴れしたことと関係があるらしい。
あの時フラッフィーズは、軍を二つ丸ごと飲み込んで黙らせてしまった。その時にフラッフィーズたちが放った夢の香りは、風に乗ってかなり遠くまで広がっていたらしい。
そして、それに交じってヴィンセント様の匂いも。
それらをかいだ幻獣たちは驚き、そして興味を持ったらしい。夢鳥がここまで大暴れするとは、何があったのだろうか。このかぐわしい別の匂いが関係しているのだろうか、と。
そうして彼らは、匂いをたどってこの屋敷までやってきた。そうしてここの現状を知ると、面白がって住み着いてしまうのだ。裏の森なり、中庭なりに。
「にぎやかなのはいいのだが……」
「少し、手狭かもしれませんね」
すっかり増えてしまった幻獣たちは、最近では屋敷の空き部屋で勝手にくつろいでいる。
それだけならまだしも、廊下の隅で寝ていて使用人に蹴飛ばされてしまったり、洗濯物と一緒に洗われてしまったり、ちょこちょこ問題も起こっていた。
「彼らがのびのびとくつろげる場所があればいいのだが……そのほうが、使用人たちも安心できるだろうし」
「ないのなら、作ってしまいませんか?」
思い切ってそう言うと、ヴィンセント様は目を丸くした。彼の肩の上では、七色の鳥も首をかしげている。
「ここは人里離れていますし、一棟くらい建てる場所はありますよね」
「なるほど、幻獣たちのために離れを作るということか。普段はくつろぐことができ、嵐の日などは避難することもできる、そんな場所を」
「はい。それで、その……陛下からの褒美の件も、まだ決まっていませんし……この件について、協力をお願いできないかなって」
さらにそう口にすると、ヴィンセント様は肩の鳥と、わたしの手の中のウサギを見た。それから、穏やかに微笑んだ。
「それはいいな。陛下にお願いして、腕のいい職人たちを紹介してもらおう」
そうしてわたしたちは、笑顔でうなずき合った。
ヴィンセント様と一緒に日々の執務をこなしたり、夫婦水入らずで料理や裁縫をしたり。裏の森や中庭で、幻獣のみんなとお喋りをしたり。
けれどそんな幸せな暮らしは、またちょっぴり形を変えていた。
「ヴィンセント様、あの、この子があなたに会いたいって……」
「奇遇だな。ちょうど俺のところにも、来客があった」
ヴィンセント様の部屋に駆け込むと、彼の肩に美しい鳥が止まっていた。鳩くらいの大きさのその鳥は、七色に輝くとても美しい羽をしていた。
『貴方が彼の奥さん? 僕はこれから、ここで暮らすことにしたから』
七色の鳥が、どことなくつっけんどんな少年の声で喋る。
「……また、幻獣が増えたんですか」
「そういう君こそ、その手の中にいるのは……」
「はい、幻獣です。この子も移住希望です」
わたしの手の上では、片手に収まってしまうくらいに小さな金色のウサギがくつろいでいた。とても高い声で、可愛らしくあいさつしてくる。
『よろしくねー』
最近、この屋敷を次々と幻獣が訪ねてくるようになったのだ。どうも、前に南の戦場でフラッフィーズが大暴れしたことと関係があるらしい。
あの時フラッフィーズは、軍を二つ丸ごと飲み込んで黙らせてしまった。その時にフラッフィーズたちが放った夢の香りは、風に乗ってかなり遠くまで広がっていたらしい。
そして、それに交じってヴィンセント様の匂いも。
それらをかいだ幻獣たちは驚き、そして興味を持ったらしい。夢鳥がここまで大暴れするとは、何があったのだろうか。このかぐわしい別の匂いが関係しているのだろうか、と。
そうして彼らは、匂いをたどってこの屋敷までやってきた。そうしてここの現状を知ると、面白がって住み着いてしまうのだ。裏の森なり、中庭なりに。
「にぎやかなのはいいのだが……」
「少し、手狭かもしれませんね」
すっかり増えてしまった幻獣たちは、最近では屋敷の空き部屋で勝手にくつろいでいる。
それだけならまだしも、廊下の隅で寝ていて使用人に蹴飛ばされてしまったり、洗濯物と一緒に洗われてしまったり、ちょこちょこ問題も起こっていた。
「彼らがのびのびとくつろげる場所があればいいのだが……そのほうが、使用人たちも安心できるだろうし」
「ないのなら、作ってしまいませんか?」
思い切ってそう言うと、ヴィンセント様は目を丸くした。彼の肩の上では、七色の鳥も首をかしげている。
「ここは人里離れていますし、一棟くらい建てる場所はありますよね」
「なるほど、幻獣たちのために離れを作るということか。普段はくつろぐことができ、嵐の日などは避難することもできる、そんな場所を」
「はい。それで、その……陛下からの褒美の件も、まだ決まっていませんし……この件について、協力をお願いできないかなって」
さらにそう口にすると、ヴィンセント様は肩の鳥と、わたしの手の中のウサギを見た。それから、穏やかに微笑んだ。
「それはいいな。陛下にお願いして、腕のいい職人たちを紹介してもらおう」
そうしてわたしたちは、笑顔でうなずき合った。