不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

12.王宮に行くことになりました

 スリジエさんは、わたしたちについてきた。そして、ネージュさんがねぐらにしている裏の森で暮らすことを決めてしまった。

『良い森じゃ。ヴィンセントの残り香がするのも良い。それに何より、この二人が幸せになるところを見届けたいしのう。これからは、わらわも首を突っ込ませてもらうぞよ』

『よかったなエリカ、こいつもおまえの力になってくれるんだと』

 どうもスリジエさんも、わたしとヴィンセント様との間を取り持とうとしてくれているらしい。頼れる味方……なのかな?

 ネージュさんのおかげで、ヴィンセント様に料理をふるまってもらえるようになった。それをきっかけに、多少お喋りができるようになった。

 スリジエさんのおかげで、ヴィンセント様にほんの少し近づくことができた。あれからヴィンセント様は、わたしが近づきすぎても警戒しなくなった。

 少しずつ、距離は近づいている。カタツムリの散歩くらいの速さで。

 いつか、夫婦として仲良く過ごせる日もくるのかなあ。いつになるんだろう。そう思いながら、そっとため息をのみ込んだ。



 ある日、ぎこちない会話が流れる食事の席で、ヴィンセント様が不意に言った。

「エリカ、陛下が俺たちを呼んでおられる。すまないが、君も来てくれ」

「は、はい。……その、どういった用件、なのでしょうか?」

「…………俺たち夫婦がうまくやっているか、確認されたいのだそうだ」

 うっ、という声が出そうになって、あわててこらえる。最初の頃と比べると、ヴィンセント様の態度も変わってきた。

 でも、夫婦としてうまくやっているかって……そう主張するにはちょっと……数年くらい経ったら、何とかなるかもしれないけれど……。

「二人そろって顔を見せ、二、三当たり障りのない受け答えを済ませれば、それで用事は片付くだろう。そう緊張しなくても大丈夫だ」

 わたしが困惑しているのを感じ取ったのか、ヴィンセント様がそう言った。彼はわたしを遠ざけようとしているけれど、わたしが困った時はちゃんと助けてくれる。

「わ、分かりました」

 そう返事をしながらも、ちょっと複雑な気分だった。

 陛下にはばれてしまうかな。わたしたちの、この距離感。ばれて欲しいのか、欲しくないのか。自分でもよく分からない。

 ただ陛下に会うのは、やっぱりとても緊張する。それだけは確かだった。
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