不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

33.これって……素敵な結末ですよね

 味方の隊列の向こう、前線に近いほう。そちらに、長い棒が立っているのが見えた。その先には、大きな白い布がくくりつけられている。その布は、さわやかな日差しを受けてまばゆいばかりに輝きながらはためいていた。

「あれって、白旗……ですよね」

『確か、降参の意味だったか?』

「戦場で、相手方と話し合いたいことがある時によく用いられるな。白旗の使者は戦いを禁じられているし、使者への手出しも禁じられている。だが、一応警戒は怠るな」

 そんなことを話している間にも、白旗を掲げた敵の兵士がその間をゆっくりと進んでくる。

 そのすぐ後ろを、がっちりした中年男性がついてきていた。その男性の両隣に、さらに兵士が一人ずつついている。まるで、彼を守ろうとしているかのように。

『やけに豪華な身なりの連中じゃな。それなりに立場が上の者が来たのかのう』

「……そんな、まさか」

 ヴィンセント様は使者たちのほうを見すえながら、小声でつぶやく。周囲にいるわたしたちにだけ聞こえるような声で。

「あれは、敵軍の総大将だ」

 えっ、と声をもらしそうになるのをあわててこらえる。フラッフィーズが、一斉に鳴いた。いつの間にか、また十羽くらいに数を増している。何かあったら、もう一度増えるつもりなのだろうか。

 わたしたちの視線をまとめて浴びながら、総大将の男性はゆっくりと口を開いた。

「私はゲンナジー。軍の代表として、和平を申し入れに来た。そちらの総大将は、貴殿だな」

「いかにも。俺はヴィンセント。この軍をまとめ、貴殿の国の侵略をはねのけるために戦っている」

 ヴィンセント様が、いつになく強い口調で答える。ゲンナジーが、決まりの悪そうな顔をした。

「こたびは我が主君の命により、貴殿の国の領土をもらい受けるために軍を動かした。しかしこれよりは、この戦いを終わらせるために貴殿と和平の交渉をしたいと思う」
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