【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
1.
「その髪留め、素敵ね……! さすが、エミュリア様だわ! ウィロウ様もそう思わない?」
「……そうね、とっても素敵」
クラスメイトの問いかけに、わたしは曖昧にほほえみ返す。
たった今、素敵だと称賛された髪留めと同じものがわたしの髪にも輝いている。エミュリアよりも五日も前から着けていたというのに、誰に称賛されることも、気づかれることすらなかったそれ。
――いや、違う。エミュリアだけがその髪留めの素晴らしさに気づいた。だからこそ、彼女は今、わたしと同じものを身につけているのだ。
「ありがとう。素敵でしょう? ラジェム家に出入りしている職人が作ってくれたものなの。そうよね、ウィロウ」
「ええ、そうね。……そう聞いているわ」
エミュリアはわたしに向けて、とても朗らかにほほえみかける。
わたし、ウィロウ・ラジェムとエミュリア・ラジェムはいとこ同士だ。
エミュリアはわたしの父の兄の娘で侯爵令嬢。対するわたしは格下、伯爵の娘である。
父親が兄弟同士なうえ、同い年ということもあって、わたしたちはまるで姉妹のように育てられた。しょっちゅう互いの屋敷を行き来し、遊んだり、勉強をしたり、一緒に出かけたりしていたし、王都の学園に通っている現在は、一緒のタウンハウスで寝泊まりしている。
そんな事情もあって、エミュリアはわたしにとっていとこであり親友だ。遊び相手のほとんどいない貴族の娘にとって、そういった存在がいることはとてもありがたかった。
だけど、エミュリアには一つだけ、困ったくせのようなものがある。
それがこれ――彼女はとても頻繁にわたしの真似をするのだ。
「……そうね、とっても素敵」
クラスメイトの問いかけに、わたしは曖昧にほほえみ返す。
たった今、素敵だと称賛された髪留めと同じものがわたしの髪にも輝いている。エミュリアよりも五日も前から着けていたというのに、誰に称賛されることも、気づかれることすらなかったそれ。
――いや、違う。エミュリアだけがその髪留めの素晴らしさに気づいた。だからこそ、彼女は今、わたしと同じものを身につけているのだ。
「ありがとう。素敵でしょう? ラジェム家に出入りしている職人が作ってくれたものなの。そうよね、ウィロウ」
「ええ、そうね。……そう聞いているわ」
エミュリアはわたしに向けて、とても朗らかにほほえみかける。
わたし、ウィロウ・ラジェムとエミュリア・ラジェムはいとこ同士だ。
エミュリアはわたしの父の兄の娘で侯爵令嬢。対するわたしは格下、伯爵の娘である。
父親が兄弟同士なうえ、同い年ということもあって、わたしたちはまるで姉妹のように育てられた。しょっちゅう互いの屋敷を行き来し、遊んだり、勉強をしたり、一緒に出かけたりしていたし、王都の学園に通っている現在は、一緒のタウンハウスで寝泊まりしている。
そんな事情もあって、エミュリアはわたしにとっていとこであり親友だ。遊び相手のほとんどいない貴族の娘にとって、そういった存在がいることはとてもありがたかった。
だけど、エミュリアには一つだけ、困ったくせのようなものがある。
それがこれ――彼女はとても頻繁にわたしの真似をするのだ。