【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
2.
ひとまずわたしは、我が家に滞在しているブレディン様の元を訪れることにした。
元々お父さまから交流を深めるよう言われていたし、はからずも彼の婚約者となってしまった今、わたしを止める人間は誰もいない。ノックをすれば、彼はすぐに応じてくれた。
「あの、先程は大変失礼しました。気が動転してしまって……」
「構いません。正直俺も驚きましたし」
ブレディン様はそう言って困ったように笑う。すごく丁寧な受けこたえ。アイラに対してはもっとずっと砕けた口調なのに。……そう思うと感慨深いものがある。
(やっぱりアイラは特別なんだよね! わかるよ、わかる)
ブレディン様にとって素の自分を出せるのはアイラだけなんだって再確認できたことがとても嬉しい。尊い。
わたしは気を引き締めつつ、そっと身を乗り出した。
「嫌……ですよね?」
「え?」
「わたしと結婚なんて。ブレディン様にはもっと愛らしくて素敵な方のほうが似合います。というか、好きな人と結婚するのが一番ですもの。親同士が勝手に決めた婚約ですし、父にはわたしから……」
「いえ……嫌ではないです」
「嫌ではないです……?」
ブレディン様の言葉をそっくりそのまま繰り返しつつ、わたしは思わず目を見開く。
元々お父さまから交流を深めるよう言われていたし、はからずも彼の婚約者となってしまった今、わたしを止める人間は誰もいない。ノックをすれば、彼はすぐに応じてくれた。
「あの、先程は大変失礼しました。気が動転してしまって……」
「構いません。正直俺も驚きましたし」
ブレディン様はそう言って困ったように笑う。すごく丁寧な受けこたえ。アイラに対してはもっとずっと砕けた口調なのに。……そう思うと感慨深いものがある。
(やっぱりアイラは特別なんだよね! わかるよ、わかる)
ブレディン様にとって素の自分を出せるのはアイラだけなんだって再確認できたことがとても嬉しい。尊い。
わたしは気を引き締めつつ、そっと身を乗り出した。
「嫌……ですよね?」
「え?」
「わたしと結婚なんて。ブレディン様にはもっと愛らしくて素敵な方のほうが似合います。というか、好きな人と結婚するのが一番ですもの。親同士が勝手に決めた婚約ですし、父にはわたしから……」
「いえ……嫌ではないです」
「嫌ではないです……?」
ブレディン様の言葉をそっくりそのまま繰り返しつつ、わたしは思わず目を見開く。