御曹司は優しい 音色に溶かされる

出会い

その日の俺は心底疲れていた。

俺は西條千隼(さいじょうちはや)家業の西條グループの系列会社の土地開発や地域再生プログラムなどの事業を担っている西條エステイツの代表取締役として、働いている。

俺は次男で結構自由が利く立場でもあり、仕事も自分の采配で好きにやらせてもらっている。

それはいいのだが、俺の見た目と地位に群がる女が後を絶たない。

いい加減うんざりしている。

大学の頃から周りの女達が煩い。

すでに女嫌いの域に達している

今日も第二秘書の女性秘書がいい寄ってきて明日は土曜日で休みなので、飲みに連れて行けと煩く言われていた。

社長室のソファ―でコーヒーを飲んでいる俺の横にべったりくっついて胸を押し付けてきたり短いタイトスカートを持ち上げて俺の膝に向き合って座ろうとしたり、あまりにひどいので女性相手だがぶちぎれた。

すぐに下がらせて男性の第一秘書に彼女の部署替えを命じた。

そして今後秘書は第一秘書のみで、資料作りなどの事務作業は秘書室に頼むように指示を出した。

仕事でも疲れているのに色ボケの秘書の相手なんかしたくもない。

不機嫌オーラ全開で、西條の系列の四つ星ホテルの最上階のバー“チルアウト”にやってきたのだ。

窓際にあるカウンターに腰掛けて、カウンター内にいる顔なじみのバーテンダーのユウジにいつものと言ってオーダーする。

このホテルには西條の一族がいつでも使える部屋が二部屋ある。

車で来た時はいつも泊まっていくのだ。
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