花言葉はピュア ー敏腕社長は百合のような彼女を守り抜くー

怪文書


環の朝は早い。

目覚ましの音と共に起床し、顔を洗い歯を磨き着替えをする。

そして兄太一の遺影に線香を焚き、手を合わせる。

簡素な朝食は和食中心で、朝のニュースを観ながら悲しい事故や事件に胸を痛めたり、動物の特集コーナーに和んだりする。

太一がいた頃はそんなささやかな話題の感想を言い合って、笑ったり不満を言うことが出来た。

しかし今はひとり心で思ったことをつぶやく毎日だ。

太一亡き後の事後処理がほとんど終わり、環は孤独の波に身を浸していた。

それでも自分には仕事があり、少ないけれど友人がいる。

そして自分を頼って欲しいと言ってくれる葉山という存在も、環の大きな支えになっていた。
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