苦くも柔い恋
過去〜焦燥〜



交際が始まったところで、期待していたような変化は何も無かった。

相変わらず学校では稀にすれ違っても目も合わないし、連絡をしてみても既読はつくものの返事は素っ気なく、酷い時には翌日に返ってくるなんてこともザラだった。


デートをしようなんて話にも上がらなかった。

それはまだ千晃の所属するバスケ部が強豪で土日も当たり前のように練習があるから仕方ないことだとわかってはいたけれど、それでも寂しかった。

それに加え、当時通っていた高校は進学校で勉強のレベルも高い。

そんな中でもトップクラスの成績を維持している千晃が忙しいことなど重々承知していた。


千晃のストイックなところは魅力のひとつであるし、勿論そんなところも好きだったけれど、和奏だって所詮は夢見るただの高校生なのだ。


甘い何かを期待するのは当然ではないだろうか。



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