元彼パイロットの一途な忠愛
5.再び繋がる想い
「えー、いいなぁ。先週のシカゴ便、各務さんのフライトだったの?」
業務を終えたCAと思われる女性客の話し声が、美咲の耳に飛び込んできた。
「ええ。久しぶりに一緒になったけど凛々しさが増してたわ。海外のエアライン経験してきたっていう風格っていうのかな? 機長昇格もすぐね、きっと」
「それでまだ独身なんだから、みんな必死にもなるよねぇ」
美咲が羽田空港店のヘルプに入るようになって一ヶ月あまり。
大翔が乗務を始めてからは、こうした噂話を至る所で耳にするようになった。
ますますカッコよくなって戻ってきたと喜ぶ声と、この半年ですでに何人もの女性が彼に告白して振られているという驚きの声。さらには心に決めた人がいるらしいという話まで飛び交っている。
八年前にここで大翔を見つめていた頃は、彼はまだパイロット訓練前の地上勤務で、グランドスタッフとして働いていた。その時も多くの人の目を惹いていたが、今はその比ではない。
優秀なパイロットとしても、大人の魅力溢れる男性としても、大翔はどこにいても注目の的だ。それゆえ広報から会社の公式アカウントの動画に出演してほしいと依頼が来ているが、頑なに断っているのだと本人が言っていた。