元彼パイロットの一途な忠愛
7.帰る場所《大翔Side》

全国的に暖かい空気に覆われ、記録的な暑さが続く七月上旬。
四年ぶりに出席する同窓会は、都内の一等地に構える高級ホテルで開催されていた。

花の模様をあしらった黄色とブラウンのカーペットにゴールドカラーのシャンデリア、円卓には柔らかい青緑色のテーブルクロスがかけられている。華美すぎず全体的に優しくあたたかみのある印象のパーティー会場だ。

イギリスへ行っていた三年間は出席できなかったが、それ以前は仕事の調整がつけば出席していた。
なかなか会う機会のない友人と久しぶりに会うのは楽しいし、違う業種で働く同級生の話を聞くのは自分にとっても刺激になる。美咲と再会する前に同窓会の知らせが来ていたら、深く考えずに出席の返事をしていただろう。

けれど今は佐奈に会う可能性がある以上、同級生の集まる場に行く気はさらさらなかった。過去に出席した時には顔を合わせることはなかったが、確率はゼロではない。

美咲にも話した通り、会いたい友人には個人的に連絡を取れば済むし、大翔自身もできるなら佐奈には会いたくない。

無責任に訓練を放棄しただけでも呆れていたが、根も葉もない嘘を周囲にばら撒き、美咲を不安に陥れていたと知った今では、軽蔑していると言っても過言ではない。そんな彼女と顔を合わせ、何食わぬ顔で食事を楽しめるほど大翔の心は広くない。

それでも今日こうして出席しているのは、美咲の後押しがあったのと、万が一佐奈に会ったところでなにもないと証明して安心させたかったからだ。

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