元彼パイロットの一途な忠愛
8.信じる力
七月二週目の土曜日。美咲は篤志に誘われ、ふたりでランチを食べに出掛けた。
一緒に住んでいた頃は珍しくもなかったが、こうしてふたりで出掛けるのは篤志のマンションを出て以来なのでかなり久しぶりだ。
大翔は一昨日の昼からウィーンへ行っていて、帰国は今日の午後の予定だ。
彼を仕事終わりにピックアップして夕飯は三人で食べようという篤志の案に賛成し、ふたりはランチを終えたあと、羽田空港の展望デッキにやってきた。
夏の日差しが眩しいけれど、よく晴れた青い空に飛行機がよく映える。
「こっちに来るのは久しぶりだ」
「JCAは第二ターミナルだもんね」
土曜日だからか、カップルや家族連れなど、デッキには多くの人がいた。
美咲は見慣れているためなにも思わないが、篤志も大翔に負けず劣らずとても目立つ容姿をしている。ベンチに並んで座っていると、周囲の女性の視線をビシビシと感じた。
「相変わらず目立つね、お兄ちゃん」
「そうか?」
「お兄ちゃんは年々お母さんに似てきてる気がする。私もお父さんじゃなくてお母さんに似てたら、もう少し美人だったかなぁ」
「そんなこと言ったら親父が泣くぞ。それに美咲は今のままで十分だろ」