元彼パイロットの一途な忠愛
3.思いがけない溺愛
「ありがとうございました」
レジでの会計を終えた美咲は頭を下げて女性客を見送ると、ふう、と小さく息を吐き出した。
ここ、カランド羽田空港第一ターミナル店は、空港の稼働に合わせ朝の六時半から夜の八時まで営業している。
旅行前のウキウキした様子の家族連れや、仕事先から疲れて帰ってきた人、この空港で働くスタッフなど、様々な客が訪れるこの店はどの時間帯も客足が途絶えることはない。
約十日前から、美咲は羽田空港店に接客スタッフとして立っている。
本来エリアマネージャーが店舗に立つ機会はほとんどないが、この店の副店長が事故に遭い、足首の靭帯を損傷してしまったと連絡があった。幸い重症ではなかったが、復帰には一ヶ月半程かかるらしい。
今年のゴールデンウィークはうまく休みを繋ぎ合わせれば十連休となる。空港は旅行客でごった返し、第一ターミナルにほど近いこの店も通常以上に混雑が予想される。
そんな中、副店長不在で店を回すのは難しいため、エリア担当である美咲がその間のシフトの穴を埋めるために駆り出された形だ。