燃ゆる熱愛〜再会したエリート消防士に双子ごと守られています〜
五、
「ごめんね、橙吾さん。別れてほしいの」
「意味がわからない。急にどうしたんだ」
橙吾さんは怒るでも悲しむわけでもなく冷静な態度で私に問いかけた。
さすがだ、別れ話のときですら取り乱さないなんて。おそらく私の心の方が荒れている。
しかしそれを表に出すわけにはいかないので、感情のスイッチをオフにしようと努める。
「フランスに修行に行くことにする」
「それは、いつから決まっていたんだ」
「同棲の話をもらったとき。どうすべきかずっと悩んでいたけど、夢を取ることにした」
私の瞳を射抜くように見つめている。
大丈夫、半分嘘で半分本当だから、堂々としていればいい。
自身に言い聞かせて、橙吾さんから注がれる熱視線を真正面から受け止めた。
「何年くらいだ?」
「わからない。三年か、五年か。もしかしたらフランスに住み続けるかもしれない」
「どうなるかわからないなら、今別れなくてもいいだろう。もしかして日本に帰ってくるかもしれないし、そうしたら一緒に暮らせばいいじゃないか」
何年も待つ気持ちがあることに正直驚いた。同時に、やっぱり、と心に隙間風が吹く。