クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~
二、偽装夫婦の心得


結婚の話はあっという間に進んだ。
お見合いの日、部屋に戻った私たちはその場で結婚の意志を表明した。大盛り上がりの父と大慈さんの御祖父様を止められず入籍の日取りまで決まった。
1ヶ月後には、私は大慈瑛輔の妻になる。

母には相手と顔見知りだったことを多少盛って話したから、ほっとした様子で喜んでくれた。

その翌週、私は大慈さんとディナーのために待ち合わせていた。
新居の内見のためだ。時間も時間なので、一緒に食事でもどうかと提案したのは私。
一緒に住む前にできるだけ彼と関わる機会を作りたい。
距離感、得手不得手、されて嫌なこと嬉しいこと、食の好みまで、平穏な結婚生活を送るために知っていて損はないはずだ。

仕事に区切りをつけてオフィスを出る。
文月ホールディングスまで彼が迎えに来てくれているので早足で。
大丈夫だとは言ったけど、元婚約者のストーキングの件もあるし、周囲に仲の良さを見せつけるにはちょうどいいだろう、と押し切られた。
表向きは幸せな結婚である。

エントランスを出るとすぐに大慈さんを見つける。
背が高くスタイルの良い彼は後ろ姿でも分かりやすい。できる男の背中を感じる。

「大慈さん。お待たせしてしまいすみません」
「今来たところだ。この近くに美味い店がある。イタリアンだが、食べられるか」
「はい。 私に合わせて来てくださってありがとうございます」
「午前の任務で隣町まで来ていたんだ。そう遠くない」

だから、気にするな、ってことかな。

大慈さんは警視庁警備部警護課の警察官。エリートSPなのだと彼の御祖父様から聞いた。

文月ホールディングスもお世話になっているUTUMI警備保障はその御祖父様が経営されている会社らしく、そこを継ぐのが大慈さんの目標で、彼が結婚したい理由でもある。
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