クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~
五、キスの意味



瑛輔との結婚から2ヶ月と少し。私たちの関係は変わりつつあった。

誤解が解けてからというもの、瑛輔は私への愛情表現を頑張ってくれているようだ。
朝、寝ぼけ眼の私に「おはよう、行ってくる」と声をかけ、帰宅が早い日は同じタイミングで寝ようと誘われる。寝る前は必ず「おやすみ」と穏やかに挨拶を交わす。一緒に食事をする時、「美味しい」と言っておかわりするのは変わらない。

だけど朝も夜も、半分寝ていても分かる。瑛輔の私を見る目は柔らかく、前より微笑みを見せてくれるようになった。

私はそんな変化が嬉しい。こんな変化があるなら、あの時勢いでキスしてしまったのも悪くなかったと思う。

瑛輔の気持ちを知って、私を拒絶したわけじゃないと分かって良かった。

『――妻であるおまえだけが特別で、ずっと守っていきたいと思ってる』

瑛輔の言葉を思い出しては頬が緩む。

特別ってなんだろう。瑛輔が私にだけ向けるその感情はなに?
ああ、だめ。私ってばどうしてこんなにふわふわしてるのかしら。

「やはり披露宴は規模が大きくなりそうだな」

現実の瑛輔の声に思考が引き戻され、私は慌てて頷く。
夕食後の時間はお互いのんびり過ごしつつ、他愛のない会話も弾む。

「お互いに家柄が絡むと、そうなるわね」

目下迫っているのは結婚式だ。文月にも大慈にも、婚姻を公にする重要なイベントである。結婚が決まってから少しづつ準備を進めてきた。
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