貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
3 からまる螺旋
 ららかはイライラしていた。
 なぜ劣化コピーが選ばれて自分が選ばれないのか、理解ができない。

 家に戻せば身の程を思い出すかと連れに行ったが、迅に阻止された。愛してるなんて絶対に嘘だろうに、どうしてそんな嘘をつくのかわからない。

 母を味方にして弁護士事務所にまで行ったのに、あっさりと見破られて追い返された。
 さらに迅は、百合花がただひとりのオリジナルだと言っていた。自分こそが百合花のコピーだと言われているかのようで、いらだちは加速する。迅はそんなつもりで発言してはいないのだが、彼女はそこまで思考が至らない。

 百合花の部屋に行き、ぐるっと見回す。あいつの持ち物を壊してやろうと思ったが、ろくなものがない。服は全部自分のおさがりで、切り刻んだところでスカッとしない。

 チェストのたぐいはなくて収納は段ボールだった。
 仕方なく段ボールをカッターで切り裂いたが、こんなものはまたいくらでも手に入る。百合花に打撃を与えられる気がしない。

 そもそも、とららかはネイルされた爪を噛む。
 あいつは見合いの日以来、帰ってこない。

 これではいくら部屋を破壊しても見ないのだからショックを受ける顔を見られない。
 せめてと思ってメッセージアプリで部屋の写真を送ってやったが、一向に既読がつかない。

 お見合いの日に出かけていたことは、その日のうちにバレて英里子に怒られた。
 昨日はホスト通いを続けいてたのがバレて怒られた。

 それもこれも全部、百合花のせいだ。あいつがミスしなければ――いや、生まれてこなければこんなことにはならなかったのに。もしひとり娘だったらもっと幸福で、今は家庭を顧みない父親だって自分を溺愛しただろうに。
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