俺様同期の執着愛

15、伝わる想い

 ふたりで抜け出すと言ったからなのか、柚葵は本当に私の手を引っ張って外へ出た。
 庭園は雪が積もっていて、あまり人はいない。
 人気のない目立たない場所まで連れ込まれて、柚葵は私に振り返った。
 少し表情が険しい。

「あの、柚葵……さっきはありがと」
「お前、無防備すぎ。武本のときもそうだけど、自覚持てよ」
「え? 何の……」
「お前のこと狙ってる奴、結構いるんだぞ」
「え? そんなことないでしょ」
「だから、自覚しろって」
「ご、ごめん……そんな怒らなくても」
「怒ってねーよ!」

 柚葵が頭をくしゃくしゃと掻きむしる。
 私はその仕草を見て、余計に混乱した。

「ちょっと、警戒心が足りなかったね。迷惑かけてごめんね」
「あー……別に、謝らせるつもりはなくて……俺が勝手にイライラしてるだけだ。すまん」

 柚葵が私に頭を下げた。

「なんで? 柚葵は私を助けてくれたんだから謝らないで。それに、さっきのいい演技だったよ。わざと、彼氏のふりをして助けてくれたんだよね?」

 柚葵は私から顔を背けて俯いてしまった。
 いつもの彼となんだか様子が違って心配になる。

「柚葵……?」
「……違う」
「え?」
「演技でも、ふりでもない」

 柚葵はぼそりと言った。

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