俺様同期の執着愛

18、もう離れたくないから

 新しい年の朝、空は青く晴れて気持ちいいけど、空気は冷えて吐く息が白い。
 神社の境内には、初詣に訪れた人たちの笑い声が賑わっている。
 かすかに聞こえる“春の海”の音楽がお正月気分を盛り上げる。

「すごい人だね……」
「はぐれるなよ」

 柚葵がそっと私の手を握った。
 寒くてもこうしてぴったりくっついていると温かい。
 ゆっくりと階段をのぼって、賽銭箱の前へ進む。

 私の願いごとは、柚葵と仲良く一緒にいられますように。
 柚葵はどんなことを願ったんだろう?
 人混みから抜け出したあと、私はふと訊ねてみた。

「柚葵は何をお願いしたの?」
「んー、内緒」
「そっか。言うと叶わなくなるかもしれないもんね」
「で、綾芽は?」
「言うと叶わなくなるって今、私、言ったよ」
「俺はまったく気にしてない」
「柚葵が内緒なら私も言わない」
「ずるいなー綾チャン」
「なんでよ!」

 新年早々、以前と変わらないやりとりをしていたら、少しほっとした。
 付き合い始めてから特別感があって以前より少し緊張したりすることもあったけど、基本的に私たちの関係はそれほど変わっていない。

 ただ、手を繋いだり抱き合ったりすることが増えただけ。

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