俺様同期の執着愛

19、その後のこと

「メシだぞー」

 柚葵がそう言ってテーブルに置いた料理はふわとろオムライスだった。

「す、すごい。マスターしてる!」
「当たり前」
「でもこれ、大きすぎない?」

 大皿に巨大なオムライスがどんっと載っているのだ。
 それに一つしかない。

「ふたりで食うからこれくらいになるだろ」
「分けないの?」
「必要ないよ。こっち来て」

 ああ、またやるのね。
 床のふわふわラグマットの上に柚葵が腰を下ろすと、私はそのとなりに座った。
 そうしたら、彼が大きなスプーンでオムライスをすくって私に差し向けた。

「はい、あーん」
「う……」

 恥ずかしい、けど素直に食べさせてもらった。

「どう?」
「美味しい……けど、自分で食べられるよ」

 あの事故からひと月立って、怪我もほとんど治っているし、お世話してもらうようなこともないのだけど、なぜか柚葵は甲斐甲斐しく私の世話をしてくれた。

「まだ、だめ。おとなしく世話されておけ」

 柚葵は同じスプーンで自分もぱくりと食べた。

「んー、こんなもんか」
「美味しいよ!」
「そりゃどうも」

 柚葵は意外と向上心が高い。
 もしかしたら、もっと料理が上手になるかもしれない。
 だったら、私も自分のレパートリーを増やそうと思う。

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