俺様同期の執着愛

5、柚葵がかっこよく見える

 ううう、どうしよう。気まずいよ。
 週明けに会社へ向かう足取りは重く、少し鬱々とした気分だった。
 だって私、同僚と関係を持ってしまったのよ。酔った勢いとはいえ、あんなことを、しかも柚葵と……。

 軽い頭痛を感じながら会社のエントランスを歩く。

 見知った同僚たちに「おはよう」と声をかけられ、どうにか笑顔で挨拶を返す。自分の所属するオフィスが近づいてくるとお腹まで痛くなってきた。

 よりによって同じ部署ってね。
 毎日顔を合わせなきゃいけないなんて気まずいを通り越して拷問だよ。
 幸い柚葵とは席が離れているから上手くやれば接触することなく過ごせるかもしれない。よし、集中しよう。

「おはようございまーす」

 私はオフィスに入ると明るく挨拶をして自分の席に着いた。PCを立ち上げて朝からチェックする予定の資料に目を通す。今日は新しい案件もないから定時には帰れるだろうと思い、さっさと仕事を切り上げて直帰する決意をした。

「おはよ、綾」
「ひぃっ!」

 背後からぽんっと肩を叩かれて思わず悲鳴じみた声が洩れ、慌てて口をつぐむ。

「柚葵……」

 なんでよ! あんたの席かなり離れてるでしょ!
 どうしてわざわざ私の近くを通るの!?

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