妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

侯爵家を訪ねて(アドルグside)

「……今回のことに関して、謝罪したいと思っていました。わざわざ出向いていただいたことも含めて、本当に申し訳ありません」
「ふむ……」

 ゆっくりと頭を下げるドルイトン侯爵に対して、アドルグは冷たい視線を向けていた。
 まず彼が安心したのが、侯爵自身は今回の件を真摯に受け止めて、謝罪の言葉を口にしたことである。彼が反発していたら、事態はもっと厄介なことになっていたかもしれない。
 一方で、アドルグはディトナスの態度が気になっていた。彼は先程からずっと、気に食わないという表情をしているのだ。

「ディトナス、お前も謝罪しろ」
「……父上、僕はまだ納得していません」
「ディトナス!」

 ディトナスの言葉に、ドルイトン侯爵は鋭い怒号を発した。
 それに隣にいる妹のエフェリアが体を強張らせているのを感じながら、アドルグはため息をつく。ディトナスの態度というものは、彼にとってはまた厄介な問題だったのだ。
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