妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

それから

 王城という場所には、何度も訪れている。だけど、慣れているという訳ではない。ここではやはり、気が引き締まる。
 といっても、それは王城だけに限った話という訳でもないかもしれない。公の場に出るとなると、背筋が伸びるものだ。私は生粋の貴族という訳でもないので、完全に慣れるということは、無理な話のかもしれない。

「クラリア嬢、来ていたんだね?」
「リチャード殿下、お邪魔しています」
「ご丁寧にどうも」

 そんな私は、リチャード殿下と廊下で顔を合わせていた。
 それはもしかしたら、運が良いことかもしれない。次期国王である彼は、何かと忙しいため、あまり顔を合わせることができないのだ。

「ロヴェリオに会いに来たのかな?」
「はい。私はロヴェリオ殿下の婚約者ですから」
「それが決まってから、もう八年くらい経つのかな?」
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