true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
【ライバルからの挑戦状?】
あっという間に2ヶ月が経ち、加東さんから事務的なことをひと通り引き継ぎ、忙しいけど、充実した毎日を過ごしている。

こまさんは、所内にいる時は、黙々と仕事をしているけど、殆ど依頼先を巡回している。
片桐さんは、所長室に籠もりっきりの時もあれば、来客も頻繁にあり、その合間には電話があったりと、目が回りそうなくらい、忙しくしている。

加東さんは、パラリーガルとして、2人の仕事の補助をしているけど、
「片桐さんは、僕が処理する何倍も早くて、殆ど自分でこなすんだ。僕に、考えながら仕事をこなせるように時間を与えてくれている。まっ、厳しさもあるけどね。凄いよ。いつ寝てるの?って思うね」
2人は僕の恩師だから、早く恩返ししたいって、勉強にも余念がない。
私も、負けてられない・・・

朝、仕事を始めると、
「おはよぉ!差し入れよぉー」
朝のルーティンの1つ、ドアを開けて、小巻さんが部屋に響き渡るくらい、元気よく入ってくる。

毎日、それぞれの好きな飲み物と、トーストを差し入れてくれる。
そして、週に1度、片桐さんのポケットマネーで、豪華サンドイッチが届けられる。
美味しいだけじゃなく、朝食代が助かるという特典付き。

「おいっ、静かに持って来てくれないか?皆に迷惑だろ?」
「あら、こまさんに言われる筋合いはないわよ。マスターの私に文句あるなら、あなたは、朝食を自分で作って、家で食べて来なさい」

夫婦の会話に、私と加東さんは、行く末を見守った。
「・・・後で私が食器を持っていくよ」
こまさんは、そっと珈琲とトーストを持って、窓側にあるテーブル席に歩いて行った。

「小巻さんの家の様子が分かるね、深澤さん」
「本当ですね」
私と加東さんが顔を合わせて笑っていると、
「仲がいいわね。若いって羨ましいわ。ここに置いておくから、優聖君にも声掛けてね」
そう言うと、小巻さんは歌を口ずさみながら、部屋を出て行った。
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