true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
【片桐さんの告白相手、現る】
いよいよ金曜日。
昨日は緊張して、よく眠れなかったなぁ・・・

深呼吸をして、事務所のドアを開ける。
「おはようございます」
「おはよう、深澤さん」
ドアを開けると、片桐さんと、上品なバリキャリ風女性が立っていた。
2人の立ち姿、凄くお似合い・・・
目に飛び込んだ絵になる姿に、思わず見入った。

「千佳さん、彼女が深澤さんです」
「初めまして。あなたが優聖君の彼女さんね?」
「は、はい。初めまして。深澤です」
「私ね、高校の時に、優聖君とお兄さんで同級生の亮聖と生徒会してたの。事務所を開業したって聞いたから、来ちゃった」
「国際結婚で、来週にオーストラリアに行くから、顔を出してくれたんだ。心聖に行ってくるね」
2人は楽しそうに、部屋を出て行った。

席に座って、思わずため息が漏れる。
「深澤さん、大丈夫?」
「すみません、朝からため息なんて」
「気になるよね。あのさ、千佳さんっていう人、気をつけた方がいいよ」
「どういう意味ですか?」
「何となく・・・僕の直感だけど、片桐さんに気があると思う」
「モ、モテますからね。片桐さん」
「彼女なのに、心配じゃ無いの?」
「心配・・・というか」
「もし、片桐さんが深澤さんを泣かしたら・・・僕は許さないよ」
初めて聞く、怒りを抑える声に、加東さんを見ると、真剣な眼差しとぶつかった。

「僕は、片桐さんだから、引き下がっているんだ。でも、もし・・・何でもない。ごめんね、仕事しようか」
目を逸らし、そのままパソコンに向かって、手を動かす加東さん。
私を心配してくれたんだ・・・
ごめんなさい、騙して・・・
私は大好きなんだけど・・・偽りの恋人なんです・・・

気持ちを切り替えないと。
そう頭では分かっていても、すぐに2人のことを考えてしまう・・・
しばらくしてから、
「少し席を外します」
私はパウダールームに入り、深呼吸して鏡を見つめた。
私と片桐さん。
千佳さんと片桐さん。
釣り合うのは、誰が見ても、千佳さんだ。
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