true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
【憧れた女性の誘惑~優聖】
明日の打ち合わせがあるから、用を済ませて早く戻らないと・・・
深澤さん、1人で大丈夫だろうか・・・

もう、9時か・・・
千佳さんに呼び出されたホテルは、事務所に車を置いて、青蘭駅から電車で行った方が早い。
事務所に寄り、こまさんに電話をかけ、書類を見ながら緊急案件の内容を確認し、10時に駅直結のホテルに着いた。

千佳さんに着いたことを連絡し、フロントで待っていると、しばらくして、ネイビー色のワンピース姿の千佳さんが、歩いて来た。

行動的で明るい学生時代より、品性が増している。
「ありがとう。来てくれて」
「お待たせしました。急用の相談って何でしょう」
「そんなに急かさないで。少しラウンジで話をしましょう」
「この後、色々と控えているので」
「事務所ではあまり話が出来なかった事があったの。お願い」
「・・・分かりました」

2人でラウンジに向かい、窓側のカウンターに座る。
千佳さんは、ワインを頼んでいた。
「優聖君は?」
「この後、車を運転するので」
「そう・・・」
しばらく沈黙が続く。

「相談は、ご主人のことですか?」
「ううん、実はね。高校時代のことを話したくて」
「高校時代?」
「告白された日から、もう20年近くなるのね」
「早いですね」
「私、本当はね、優聖君が好きだったの。でも、亮聖と付き合った後だったから・・・」
「学生時代の話ですから。今が幸せなら良いじゃないですか」
「そうだけど・・・」
「彼に何か問題でも?」
「とても優しいわ。15歳年上だし、仕事上で気があった人だから、パートナーって感じなの」
「千佳さんは仕事が好きだし、いい関係ですね」
「他人・・・行儀なのね」
「千佳さんの結婚を、心から祝福してますよ」
「優聖君にそんなこと言われると・・・寂しいな・・・」
「それで、ご相談は何でしょう?」
「結婚することが決まってね。後悔してることがあって」
「えぇ・・・その前に、飲むペースが早すぎますよ」
「いいのよ。今日は飲みたいから」
店に入ってから、ワインを飲み干すペースが早いのが気になった。
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