true or false～銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する

【tule～気づいた気持ち～優聖】

心聖に現れた彼女が、勝川先生から紹介された事務スタッフだと知った時、俺の事務所で必要な存在だと直感した。
清純さが、表情、声、話し方に表れていた。
一生懸命さも、何処か放っておけない所も、また愛らしい。

父さんから、結婚話は度々あったが、その気は無かった。
見合いの話を断るために、咄嗟に閃いた偽りの恋人･･･のはずだった。
演じているつもりだった。
彼女役としてお願いした以上、大切にしようと･･･
感情移入し過ぎたせいか、この関係が続けばいいと思ってしまう。
そして次第に、本当の彼女だと錯覚してしまう自分がいた。

何だろう、この感情･･･
いつの間にか、深澤さんを目で追っている。

父さん達が来る予定だった朝、ほんの少しだけど、俺の家で過ごした時間に、胸がザワついた。
この時間を、もっと過ごしたいと。

楽しそうに加東君と話をしている深澤さんを見ると、モヤッとするものを感じる。
いつもの光景なのに。モヤッとさが、増してきている。

火曜日は、終了時間になり、所長室を出ると、2人がコソコソ何かを話している。
「お疲れ様」
声を掛けると、2人それぞれ挙動不審だった。
「お先に失礼します」
「お疲れ様でした」
「あぁ･･･お疲れ様」
2人揃って、帰って行った。

どうしようもなく、イライラする。
裁判の時にすれ違った検事や、怪訝そうな顔をする警察官、御託を並べる上から目線のベテラン弁護士にイライラするのとは、また違った苛立ちだ。

嫉妬･･･
気づいていた自分の気持ち。
上司だから。
恋人のフリをしてもらう約束だから。

「抑制』といく鎖の鍵が壊れ始めた。、