true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
【deep love~嫉妬は溺愛を招く】
あれから2ヶ月。
事務所は新たに冴子さんが加わり、賑やかになっていた。
「加東君は優秀ね。私の秘書にならない?」
「今もほぼ、秘書状態じゃないですか。片桐さんより冴子さんの仕事が殆どですよ」
「いいじゃない。優聖には心海ちゃんがいるでしょ?何?もしかして・・・ダメよ、人妻に手を出しちゃ」
「な、何言ってるんですか!人聞きの悪い。分かりました。何したらいいですか?」
「あのね、これなんだけど・・・」
加東さんの隣の席は、いつの間にか冴子さんに変わっていた。

私と優聖さんの関係は・・・
結婚式は、私の希望で、家族と事務所の人達で執り行った。
結婚生活は、それまでと変わらない。
一緒に出勤し、帰りは私が早く帰って、御飯を作る。

時々、難しい顔をして、ソファに座ってパソコンとにらめっこしているのを見る。
気を使って、少し離れて座ると、
「心海、おいで」
と手を引かれ、横に座ると優しく抱きしめてくれた。

今日も変わらず2人で出勤し、夫婦ではなく、事務員として気持ちを切り替える。

私が帰ろうとすると、優聖さんと約束していた企業の担当者が受付に到着した。
「どうぞ、中にお入りください」
「遅い時間にすみません・・・あれっ?心海ちゃん?」
「・・・もしかして、夏樹君?」
「やっぱり、大きくなったね。佳孝は元気?」
「うん、元気だよ」
「こんなに綺麗になるなんて、ビックリした」
「夏樹君も、カッコ良さが増したね」
「懐かしいよ。あの頃、心海ちゃんが懐いてくれてさ。本当の妹みたいな存在だったから、気になっていたんだ」
「夏休み、ずっと一緒だったもんね」
「少し、心海ちゃんに気があったけど、佳孝の妹だから、我慢していたんだよ」
「夏樹君・・・」
「縁を感じるね。こんな所で会うなんて」
「実は、私ね」
「お待たせしました・・・何かありましたか?」
「片桐先生。お世話になります。実は」
「い、いえ、何も。じゃあ、夏樹君。ごゆっくり」
「心海ちゃん!この後、少し話をしたいから、帰る時に声を掛けるよ」
「・・・2人は、お知り合いですか?」
「えぇ、心海ちゃんのお兄さんと同級生でしてね。学校帰りに家に寄って御飯を一緒に食べたり、高校の夏休みは、よく泊まって遊んでいました。懐いてくれて、本当に可愛くて」
「懐いて・・・ですか・・・」
「1度、皆で花火大会に行った時、迷子になって。僕が見つけて、手を繋いで連れて帰ったんですよ。僕達の部屋に来て、疲れて寝てしまったり・・・寝顔があどけなかった心海ちゃんが、こんなに綺麗になるなんて」
「へぇー、そんな事が・・・」
横目で優聖さんを見ると、冷ややかな視線とぶつかった。
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