どん底貧乏美女は夢をあきらめない

幸せエピローグ

1歳になると双子を保育園に預けて美玖は仕事に少しずつ復帰した。

それまでは毎日戦争のようなありさまで、大吾も二人を順番に風呂に入れるために時間になると帰って来てくれるのだが、慣れない最初の頃は、のぼせてしまって二人を順に入れるとフラフラになっていた。

義母の久美はほとんど毎日のようにやって来ては、育児の補助をしてくれる。

必ず9時から15時までいてくれるのだ。そして15時になるとアラームが鳴る。

なぜその時間なのかとある日尋ねるとちゃんと時間を決めないと双子が可愛すぎて夜までいてしまうからと言って笑っていた。

時々由美子を伴ってやって来る時もある。

そんな時は、二人に任せてゆっくり買い物に行ったり、美容院に行ったりリフレッシュする時間をもらっていた。

由美子も双子にメロメロになっていて、おばあちゃん気分まで味わわせてもらってこんなに嬉しいことはないと言って喜んでくれた。

本当に熟女二人には頭が上がらない。

保育園に行くようになっても、どちらかが熱を出すと必ずもう一人も熱を出すのでそんな時はヘルプに来てくれるのだ。

大吾は多分自分たちは母親にあんなに構ってもらってないと思うと言って、その変わりように舌を巻いていた。

料理だってそうだ、きつねうどんやクッキーやシフォンケーキ迄作れるようになり、離れのゲストハウスでお友達に披露しては皆にびっくりされているらしい。

そうして、3年後双子も3歳になり少し育児も楽になった頃、大吾はハワイに皆を連れて行ってくれた。

美玖たち家族4人と榊の両親の6人で楽しい旅行になった。

ホノルルの動物園やサンセットクルーズ、イルカのショーで有名なシーライフパークと主だった観光地は全て回った。

大吾とお父様は一日ゴルフを楽しんでいた。

その日はお母様と双子と美玖でショッピングデーとなった。

ショッピング大好きなお母様は元気溌剌でアラモアナショッピングセンターを闊歩していた。

沢山双子の服も買ってもらった、もちろんブランド物の…

妊娠から出産、その後の子育てまでお母様にはほんとに支えてもらったので、そんなお礼と感謝を込めて大吾がこの旅行を企画してくれたのだ。

子供達が大きくなるとだんだん自我も芽生えて双子なのに性格は全然違う。

美鈴はお転婆でいつも飛び跳ねているので、よく怪我をしてべそをかいている。

東京のおばあちゃんが大好きで強請れば何でも買ってくれる義母は、宝箱のようなものなのだろう。

大吾と相談して買う前に必ず美玖か大吾に相談してほしいと言った。

我儘放題の上から目線のお金持ちのお嬢さんにはなって欲しくない。

雄吾はどっちかと言うとおとなしく、気に入ると一つの事に長い時間取り組んでいる我慢強さがある。

大吾は長い夏休みや冬休みには美玖の実家に二人を連れていく。

そして母や父に美玖を育てたように野菜作りや家の手伝いを通じて自然の中で感性を育んでやって欲しいと言っている。

二人が小学生になると夏休みの間中、長野で過ごすようになっていった。

父や母は孫がやって来る夏を楽しみに待つようになった。

子供達も長野のじっじとばあばが大好きで、東京のじっじとばあばとはまた違った接し方をしている。

東京では相変わらず義母は、仕事に忙しい美玖を助けくれる。

美玖の提案したプチパリスタイルも順調で美玖の教育で後輩も育ってきている。

美玖は前の会社を辞めた時、所持金が底をついてきたどん底の究極の貧乏時代を思い出しては、奢ることなく相変わらずの節約精神で子供達にも接している。

子供達にも美玖の節約料理は好評で、今日は全部でいくらの料理?などと美鈴は時々聞いてくる。

雄吾は究極節約料理の白菜丼が大好きでたまに作ると大吾と二人してハイタッチして喜んでいる。

自分の夢をあきらめず頑張っていたので、KAI空間デザイン事務所に拾ってもらって今日がある。

これからも、お客様の笑顔を励みに大吾と二人夢を追いかけよう。

そしていつか、自分たちの家を建てたいと大吾と話している。

今事務所の近くの土地を大吾が物色中だ。

今の事務所と家の距離が快適すぎて、なかなか離れられないけれど、子供たちの事を考えれば戸建ての家でのびのびと育ててやりたい。

庭で野菜を育てて、自分たちが育てた野菜をありがたく頂くそんな生活が夢だ。

長野の実家で母と一緒に育てた野菜や花が懐かしい。

そんな環境がどん底にあっても前を向いて夢を追いかける力をくれた。

そして、お金がないから諦めるのではなくて、どうしたらお金がなくても学べるのか自分に力を付けられるのか、楽しんで工夫して生きてきた。

そして愛する人と家庭を作って、大切な人がどんどん増えていく、そんな幸せな自分が誇らしいと思う美玖だった。

                 完
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