キミと桜を両手に持つ
episode11
「凛桜、……早く入れて」
「は、はい……」
彼の声が暗がりの中低く甘く私の耳に響く。
「……そんなに震えてたら上手く入らない……」
「だ、だって……」
湿った熱い吐息がふっと耳にかかり、思わずビクッとしてしまう。彼の誘惑するような声音で囁かれ先程から心臓が胸から飛び出してしまうのではないかと思うほどドキドキしている。
「ほら、もう一回。こうしてゆっくり入れて……」
「や、やっぱり無理……」
「ん……?怖い?大丈夫、優しく教えてあげるから」
彼の大きくて温かい手が私の手の上に重ねられる。背中には彼の逞しい体を感じで息が上がってしまう。彼の指がするりと私の指に絡まってその感触に思わず息をのんだ。
「……うん、いいよ……ほらもっと奥まで入れて……」
彼が色っぽく吐息を漏らしながら囁く。
「……あっ……」
変な声が漏れてしまい、ギュッと唇を噛み締める。彼の声にはとてつもない色気が含まれていて、体がゾクリと震えてしまう。
「凛桜、そんなにビクビク動いたら入らない」
藤堂さんの空いている方の手が後ろからするりと伸びて私の体に巻きつくと私が動けないようにグッと固定した。そして私の手を再び動かし始めるとため息を漏らした。
「ん……そう……今度は少しずつ上に動かして……」
さらに体を密着してきた彼に「上手だよ」と低い艶のある声で囁かれついに限界に達した。
「やっぱり無理です!!!これ以上できません!!!」
悲鳴のように叫んで持っていた鍵をゴトっと床に落とした。藤堂さんは驚いたように目を丸くした。
「せっかく上手に出来てたのに。もう一回初めからやってみる?」