キミと桜を両手に持つ
episode15

 「一樹さん、疲れてないですか?お茶飲みますか?」
 「大丈夫。もうそろそろ着くよ」

 お盆休みの初日、藤堂さんは私を家族に会わせたいと言って家族が集まっている別荘へと車を走らせた。車は都内を出て渋滞の中小田原方面へと向かいその後ずっと海沿いを走っている。私は窓から見える景色をしばし眺めてから後部座席にある洋菓子の詰め合わせの入った紙袋を見た。

 彼のご両親は普段は通勤などの都合で都内のマンションに住んでいるらしい。でもこうして休暇に家族が集まると家族全員が入るほど大きくないらしくよく別荘で集まって過ごすらしい。

 彼の兄姉3人はすでにお子さんが何人かいる。全員集まればおそらく二十人近い人数になるに違いない。確かに都内のマンションだと全員集まるには狭いのかもしれないけどそんな大きな別荘を持っている彼の家族はどんな人たちだろうと色々と想像してしまう。

 彼のご家族の事業が和菓子屋さんだったら洋菓子のほうがいいかなと思い一応詰め合わせを買って持って来たけど、本当にこれで大丈夫かな……。彼は皆なんでも喜んで食べると言ってはくれたけど……。

 一抹の不安を抱えながら運転する彼を見つめていると、やがて藤堂さんは海沿いの道路を曲がって丘を登っていき、突き当たりまで運転して門を通り抜けると大豪邸の前に車を停めた。建物は三階建で、一階の一部が車3台停めれるスペースのガレージになっていてその横にも車が4台もおける駐車スペースがある。ガレージのある一階の上には二階、三階と続いている。

 「い、一樹さん……これ、どこのホテルですか?」

 私は震える声で藤堂さんに尋ねた。
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