キミと桜を両手に持つ
episode17
「皆さん、お疲れ様でーす!」
私と花梨ちゃんそして遠坂くんは、アグノスや撮影スタッフさん達と一緒にグラスをかかげて乾杯した。
ここは撮影があった場所からわりと近場の居酒屋で、広い店内は大勢の人たちで賑わっている。黒い色調の落ち着いた雰囲気の内装になっていて比較的新しいお店なのかとてもお洒落。
撮影は結局予定が一時間以上も押して先ほど終了。でもウェブ用に載せる動画や画像も花園さん達と一緒に相談して決めて無事仕事を終えることができた。今日撮影したものは撮影会社が後ほど修正や編集をかけて私達に送ってくれることになっている。
撮影が終わった後、アグノスの人達が皆を労いたいと言って私達全員を夕食に誘った。それで皆でこの居酒屋で食事をする事になった。
「ネットアーチの皆さん、ビールとか全く飲まないんですか?」
黒澤さんが先程からウーロン茶ばかり飲んでいる私を見て尋ねてきた。私が飲まないからなのか花梨ちゃんも遠坂くんも同じように水やウーロン茶だけ飲んでいる。
「えっと、実は私アルコールがちょっと苦手で……」
「そうなんですね」
黒澤さんはそう言いながら私の隣に座っている遠坂くんをチラリと見る。
遠坂くんはものすごくイケメンなのに女性と言うよりは人間一般にあまり興味がない。撮影の時からアグノスの女の子達はなんとか彼に話しかけようとしているのに、なかなか誰も彼と会話を続けることができない。お酒を飲んでリラックスすれば話しやすくなるかもと期待していたのかもしれないけど、話しかける隙を与えずひたすら黙々と食べている彼を見てがっかりしている。
「ねぇ香澄、例の企画書どうだった?」
花園さんの隣にいる栗原さんと言う女性が彼女に話しかけた。