キミと桜を両手に持つ
episode06
「ただいま」
「あ、おかえりなさい」
朝のジョギングから帰ってきた藤堂さんは冷蔵庫の中を開けると冷たい水の入ったボトルを取り出してそれをゴクゴクと飲んだ。彼の朝食をお皿に盛ってラップに包んでいた私は思わず手を止めてその逞しい体をチラリと盗み見た。
彼は体を動かすのが好きで、朝会社に行く前40分ほどジョギングをしている。低血圧でベッドから起き上がるだけでも一苦労の私には朝から激しい運動ができる彼が羨ましいというか少し信じられない。
でも朝こうして40分ほどジョギングしてくれる事で私にバスルームやトイレなどを好きに使えるようプライベートな時間を作ってくれる。なので朝彼がジョギングに出るとすぐにシャワーをして会社に行く準備をして、彼が帰ってくると今度は彼にプライベートな時間ができるよう私は早めに会社に出勤している。
「凛桜、今週末家具を買いに行かないか?車を出すよ」
先日彼と正式に同居することになり、居酒屋でご飯を食べながら家賃や公共料金、食費諸々の分担を話し合って決めた。それで藤堂さんはまず私の部屋にドレッサーやチェストなどを買おうと提案した。
「ありがとうございます!じゃ週末は予定を空けておきますね」
「うん。じゃシャワーに行ってくる」
彼がバスルームに行くのを見ながら私もそろそろ会社に出勤しようかと思っていると、急にあることを思い出して慌ててバスルームへ走った。
「藤堂さん、待って!」
「え?なに?」
ガチャリと洗面室のドアを開けた彼は既にシャツを脱いでいて、逞しい胸や割れた腹筋が露わになっていて思わず目を背けた。
「や……!ど、どうしてシャツを脱いでるんですか!」
「えっ?だって今からシャワーを浴びようと思って」
も、もう!そういうのは中に入ってドアを閉めてから脱いでほしい……。